| 16
\section{三角関数の極限}
三角関数の微分を求めるためには \lim_{\delta \to 0} \frac{\sin(\delta)}{\delta}=1 を示す必要がある.
\input{menseki4.tex}
(鋭角とする )とおくとき A を通り, 軸と平行な直線と OP の交点を B とおけば
\triangle AOP \subset {扇形} AOP \subset \triangle AOB. ここで各図形の面積を求める. 文字化けした文字があります。TEX形式数式の中は半角英数字のみでかいてください。 によれば
より . さらに より で割って を乗じれば \cos \theta \leq \frac{\tan \theta}{\theta} \times \cos \theta =\frac{\sin \theta}{\theta} \leq 1. のとき
1 = \lim_{ \theta \to 0 } \cos \theta \leq \lim_{ \theta \to 0 } \frac{\sin \theta}{\theta} \leq 1. これより \lim_{ \theta \to 0 } \frac{\sin \theta}{\theta} = 1. これで,三角関数のもっとも基本的な極限値が求められた. だが,この証明は循環論法になっていて数学的には不完全である.
\
{ 扇形} の面積は小学生でも識っている. しかし,その証明には 半径 の円の面積 が であることが用いられている.
\subsection{円周率} 円周率の値が であることは良く知られているし, 半径 の円の周の全長が ,円の面積 であることは国民の常識である.
しかし,円周率の定義は案外知られていない. 円周率は であると覚えている学生もいて無理数の例として をあげた. 私は応対に窮した. また 大学の編入試験での口頭試問に の面積を出したところ半径が なので と答えが返ったこともあった.
円周率の率とは割合のことである. すなわち, 円周率とは円周の全長と直径の比であり,英語での表現は the ratio of a circles's circumference to its diameter であって,英語には円周率のような簡明な呼び名はない. 強いていえば the number pi という身も蓋もない言い方もある.
単位円の全周の長さが なのは の定義であり,円の面積が になるのは証明が必要な定理である.
円はすべて相似なので 半径 の円の場合は ,であり 長さが単位円の場合の 倍なので ,面積は 倍になるので . である.
高校数学では,三角関数の微積をやってその結果, を 0から 1 まで定積分が計算できて をえる. しかしその計算には置換積分で三角関数に置き換えて正弦関数の微分を使う. かくして求まった値が四分円の面積である. これを4倍して円の面積が になることを示すのである.
これを学習した高校生は,それまでの学校教育の中で円の面積 であることを暗記してきたが 公式が証明できてうれしい,と言って感動するところである.
円の面積公式を用いてはじめて扇形の面積公式が証明できる. それを用いて不等式ができそれか 三角関数の極限の公式が得られる. 三角関数の微分の公式を導くには三角関数についての和を積に代える公式を使う.
{ 扇形} の面積公式は中学ですでに使っているので証明をする必要性を感じない. しかしその証明には円の面積が になることをが当然使われているので循環論法になっている. デキの悪い学生の答案のようなものと 同様で 証明になっていない.
インターネットで 「三角関数の極限の公式 循環論法」 として検索すると多くのページが循環論法であることを指摘している.
高木__治の名著『解析概論』でも面積を使わないで三角関数の極限の公式を示す方法が書いてある. それは曲線の長さを一般に定義してからそれを円の場合に使うので理解するには結構 ハードルが高い.
|