| 既に他の人が書かれていることの繰り返しだが……
行列 を一次変換 (線型写像) と見なすとき, 函数や写像を左記法で と書くのにあわせて と書けば, 行列の積 は函数の合成 に対応する. しかもこのとき, を縦ベクトルとして書くと, というふうに行列とベクトルの積は縦ベクトルを行列とみなしたときの行列の積と整合的になる. ベクトルの一次変換や一次変換の合成が「行列の積」という一つの規則で記述できることが合理的だというわけ.
で, そういう事情から, 線型代数学(一次変換と行列論・ベクトル空間論)では縦ベクトルを用いることのほうが多い. しかし高校範囲, とくに数学II・Bまでしかやらないのであれば, 縦と横の記法に本質的な差異は発生しないので, ノートをとるときに場所をとらないなどの理由もあってか横ベクトルが好まれる傾向もある. 一次変換の代わりに複素平面を扱うカリキュラム構成になっていた時期では縦ベクトルを使う必要自体が出てこないから, 教師によっては縦ベクトルを好まない人もいるだろう.
なお, 函数を左記法ではなく右から作用すると考えるなら, ベクトルの縦と横の関係は逆転する. 右記法ではよく冪表記が用いられるのでそれに従うと, 行列 を一次変換 とみなしたとき, 行列の積 は合成 に対応し, ベクトルを横ベクトルとして書けば とやはり統一的に扱える.
函数は左から作用させて, 行列は右から掛けるとかあるいは逆に行列を左から掛けるが函数は右からというようなことをやると, 積と合成で順番が逆になる程度の違いではあるけれども, 積や合成を複数重ねるようなことを考え始めるとややこしくなるので通常はやらない.
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