| 去年の京大前期の確率ですね.まぁ,難しいです.
この問題は,『N回の操作が終わったときに赤玉がN+1以外の箱に入っている確率』*『N+1回目の操作で赤玉が入った箱が選ばれる確率(1/N)』 であることまでは,すぐに気づくと思います.N回目の操作の後,赤玉がN+1の箱の中にあれば,N+1回目の操作で赤玉はN+1の箱を離れますからね. 問題は『N回の操作が終わったときに赤玉がN+1以外の箱に入っている確率』をどう考えればよいのかです.
結論を言うと,『N回の操作が終わったときに赤玉がN+1以外の箱に入っている』⇔『N回の操作で一回以上N+1の箱が選ばれる』です. この言い換えは,高いレベルの状況把握センスが要求されます.(つまり,気づくのは難しい) 一応,なぜこの言いかえが出来るのか説明いたします.
k回目の操作で初めて(N+1)の箱が選ばれたとします.すると,赤玉はN+1の箱からkの箱に移動します. この後,(k+1),(k+2)…,N回目の操作が行われていくわけですが, ・k+1回目の操作の直前では,赤玉はkの箱にある ⇒k+1回目の操作の後,赤玉はkか(k+1)の箱の中に必ずあります. ・k+2回目の操作の直前では,赤玉はkか(k+1)の箱にある ⇒k+2回目の操作の後,赤玉はk,k+1,k+2の箱のどれかの中に必ずあります.… ・(k+l)回目(k<k+l≦N)の操作の直前では,赤玉はk〜(k+l-1)の箱の中にある ⇒k+l回目の操作の後,赤玉はk〜k+lの箱の中にある事がわかります.
この議論が何を意味するかと言うと,『一度N+1の箱から離れた赤玉は,N+1回目の操作がなされるまでは絶対にN+1の箱に戻ってこない』です. つまり,N回の操作の中で2回以上N+1の箱が選ばれても,赤玉はN+1の箱の中には戻ってくることはありません. つまり,『N回の操作が終わったときに赤玉がN+1以外の箱に入っている』⇔『N回の操作で一回以上N+1の箱が選ばれる』という結論が導かれるわけです.
従って,『N回の操作が終わったときに赤玉がN+1以外の箱に入っている』⇔『N回の操作で一回以上N+1の箱が選ばれる』となるのです. 『N回の操作で一回以上N+1の箱が選ばれる確率』の計算は簡単で,1-{(N-1)/N}^Nですね.
これだけの議論を経ない限り,この結論は導けません. 確率にはこのような難しい状況判断を求められる問題が多くありますが,大抵は誘導によって気づかせてくれる問題が多いです. 近年の京都大学の問題を除いて…(東大でもこの手の難しさの問題はあんまり出ない.)
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